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2008年11月22日(土)

「百万円と苦虫女」

百万円と苦虫女百万円と苦虫女
(2008/05)
タナダ ユキ

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主人公佐藤鈴子の受難の人生。

平穏に暮らすことモットーにして、普通に生きてきたはずだった…。
思わぬところで落とし穴にはまった主人公は、前科者になってしまった。
なんとも理不尽さを感じるけれど、やったことは確かに犯罪であった。
後から考えて、こんなことをするイメージが鈴子にはないので意外なのだけど、
発端はいつもと違う行動からやってきたということだろう。

出所した鈴子を待っていたのは、冷たい世間の目と、何も聞こうとしない
両親の姿勢。
いたたまれない思いから、ひたすら働き、100万円貯まったところで、家を出た。
思えばどこにいても所在無い気持ちが消えることのなかった鈴子さん。
誰もが自分を知らない場所を転々とするのは、いい思い付きであった。
基本は100万円貯まったら移動すること。
海の家、桃園、ホームセンターと職も色々。
出会いと別れ、心温まること、悔しいこと、悲しいこと、切ないことなどたくさん経験しつつ、
人生の旅を続けるその姿は、たくましく、共感できる部分も多い。

ところどころで挿入される弟のエピソードも、理不尽で悔しい話だ。
はじめは姉の頑張る姿に勇気付けられていた弟だが、最終的に前向きに戦う決意を
固めたその姿は、今度は姉の心が動かされ、また頑張ろうと前向きになるのだった。

結局ハッピーエンドはまだ遠いようだが、鈴子の旅を応援したい。



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05:45  |  タナダユキ  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

2008年11月21日(金)

「ctの深い川の町」

ctの深い川の町ctの深い川の町
(2008/08)
岡崎 祥久

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故郷に帰ってタクシー運転手になった主人公の毎日が描かれます。

主人公は華々しいことから逃げることによって、不幸に陥らないように生きてきた。
しかし憂鬱な気分が去ることはなく、一念発起して故郷に帰ることを決意した。
彼が就職したタクシー会社は、ノーブル交通。貴族の召使のような衣装に身を包み、
ドアの開け閉めは必ず運転手が手動で行い、スピードは出さず、とにかく人が呼んだら
かならず止まることをモットーとしている、一風変わったタクシー会社だった。

主人公の毎日が淡々と綴られるのだが、発明家の同僚や、客として乗ってきた子持ちの同級生、
数学者、同僚の女子社員など、興味深いキャラクターがたくさん。
彼らとの会話はおもしろく、また深いものがある。

何が起こるというわけでもないが、主人公の行く末を案じつつ、
文章の面白さ、独特のユーモアで、なかなか楽しめる1冊です。

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04:56  |  岡崎祥久  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2008年11月20日(木)

「やさしいため息」

やさしいため息やさしいため息
(2008/05/16)
青山七恵

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表題作の「やさしいため息」と「松かさ拾い」の2篇が収録されています。

「やさしいため息」
何ともいいがたい、孤独なお話。

主人公はある日通勤電車の中で、4年ぶりに行方不明だった弟と再会。
久しぶりだというのに、昨日も会ったように会話する2人。

会社では人と距離をおき、会話もほとんどしない、食事も一人、付き合いは全て断るという
かたくなに一人にこだわっている主人公。
それに対して、弟はいつもニコニコして如才なく何でもこなし、人付き合いも上手い。
家族に迷惑かけることをしても、悪びれることなく、にこにこしてるうちに、周りは何も言えなくなってしまう。
そんな弟を主人公は嫌っている。でもきっとどこかで羨む気持ちがあるのだろう。

再会の日から主人公の家で暮らすようになった弟。
そして夜になると、主人公のその日の行動をノートに書き留めていく。
主人公はあまりになにもない日々に、嘘を織り交ぜながら話をするようになる。
それが、あることをきっかけに、少しづつ変化し、本当のことが増えていくのだが…。

弟に対する嫌悪感とまではいかないまでも、ちょっと疎ましく思う気持ちは共感できる。
身近にこういう弟がいたら嫌だと思うから。
でも主人公はこの弟を嫌いながらも、どこかで救済を求め、執着もある気がする。
それにしても、主人公の孤独はどうだろう。
付き合っている人がいなくなってから、ずっとひとりきりで生きていたわけだけど、
特にそれを気にしている風でもなかった。それが弟の日記により、赤裸々に綴られた
自分の孤独にひるんだのだろうか。結末も淡々としてる。
でも読み終わっても、絶望感は感じられない。
これは文章力のなせるわざなのかな。
じれったいけどわかる、いやだけどこういうものかな…というような物語でした。


「松かさ拾い」
主人公の上司に対する思いをやわらかく表現しています。
主人公にはちゃんと恋人もいるけれど、結婚して娘もいる上司を
なんとなく別枠で存在しているよう。
だから恋人に何を言われようと、上司の娘のために松かさを拾うのも
へっちゃら。映画館でほくそ笑んでしまうのでした。
まあかわいらしいといえるのではないでしょうか。

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00:01  |  青山七恵  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2008年11月17日(月)

「目薬αで殺菌します」

目薬αで殺菌します (講談社ノベルス モF- 43)目薬αで殺菌します (講談社ノベルス モF- 43)
(2008/09/05)
森 博嗣

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Gシリーズ7作目。
久しぶりなので、いつもの顔ぶれが懐かしく感じられた。
相変わらず会話が面白くて、笑えた。特に加部谷と海月の会話がいい。

今回はギリシア文字はα。目薬の名前である。
目薬に劇薬が混入されていた事件が発端で、その後殺人事件が発生。
赤柳探偵が、製薬会社に雇われて事件を調査。でもそれだけではなく、一連の
事件の調査もしていて、ちょっと危険な目にあったりもする。
やはり四季の影がちらほらするようだ。
萌絵と犀川がほとんど出てこないのが寂しいけど、萌絵は東京にいるのだから
仕方がない。それぞれが別個に違う人物から同じ質問をされ、その答えが同じだったのが
おもしろかった。

海月は特に活躍はなかったけれど、加部谷との関係はこのままなのか。
四季は何をしようとしているのか。気になるところは山ほどありつつ、
まだまだ真相は見えてこないです。
でもおもしろいので、まだまだこのシリーズは続いてほしいと思う。

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08:11  |  森博嗣  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2008年11月15日(土)

「エキストラ!」

エキストラ!エキストラ!
(2008/09/20)
吉野 万理子

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仕事に燃える女の子の物語。

主人公の紺野真穂は、大学卒業後コピーライターとして3年間勤めたが、会社が倒産。
次に勤めたのがキャラパークというキャラクタービジネスの会社だった。
ここで営業職に就き、様々な経験を積み重ねながら、成長していく姿が描かれる。

先輩への恋愛感情、女の子の陰口、取引先の無理難題と、ありがちな設定では
あるけれど、仕事に対する一生懸命な姿は微笑ましい。
こんな風に仕事一色で生活したことがないので、少しあこがれたりもする。

タイトルのエキストラ!は、彼女があこがれる先輩の言葉に出てくる。
「舞台の隅っこにいるせいで演出家の目に入らないから、好き勝手に動いてもチェックされない
自由さがある。舞台にいなくても気にかけてもらってない分、自分から降りない限り、
一生踏ん張っていられる、エキストラはエキストラでも!マークのついたエキストラ」
なかなかいいお言葉である。

紺野は先輩への思いをかなえられるのか。またどうして仕事をするのかという根本的な
答えをみつけることができるのか。
この結末はすがすがしく、いいと思った。





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00:02  |  吉野万里子  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑
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